北浦の家 設計ノート
 この住宅はある定年を迎えた夫婦が人生の記念として計画された。「二人でどの様に豊かに暮らしていくか」がこれからの人生のテーマであると共にこの住宅のテーマでもあった。

■光の取り込み方法を丁寧に決めてゆく

 この住宅は夫婦のライフスタイルを直接的に反映し形作られている。「柔らかな光の中でゆっくりと一日が始まり、夕日を眺めながら静かに終わる。」そんな生活の場を作り出すために特に光の取り込み方法と部屋の配置、構成する素材に注意し色々な表情を表す。光を注意深く室内に取込むことで季節や天候、方位によって光は様々に変化し色々な表情を表す。光を注意深く室内に取込むことで季節や時間の流れの繊細な部分を体感することができる。
 設計は最初にその空間と光の好ましい関係をイメージし配置してゆく方法をとった。
清々しい朝日が差し込む東側にダイニングを、光の柔らかな北側に趣味の絵画のためのインナーテラスを、暖かな南側に読書やお茶を楽しむための広縁を、夕日と湖を展望できる西側に浴室と寝室を配した。冬季の暖かさは広縁で、夏季の涼しさはインナーテラスが大きな効果をもつ。
 光の取り込み方法を丁寧に決めてゆくことで季節や時間の変化がそれぞれの場を活き活きと充実した空間となっている。

■自然の造形を意識した素材

 素材については自然で心地よい素材感を持つものを用いた。外壁、塀、犬走りは粗目のスタッコで統一した。樹木や岩といった自然の造形を意識し、周囲の環境になじむ様にデザインした。内装では壁や天井にスエードの布地を多く用いた。ダイニングやインナーテラスはコルク材を用いた。壁と同様に床にも心地よい素材を採用している。
 この住宅は組み立てられたストーリーと様々な希望を夫婦の好みとしているソフトで肌触りのよい素材を用いて和風の手法にて実現した。