しみず小児科・内科クリニック 別棟増築 設計ノート

■計画

2015年竣工のしみず小児科・内科クリニックの職員用休憩施設の別棟増築です。職員の増員に伴い既存の休憩室では収容しきれなくなったために計画され、2019年1月より設計が始まり同年10月の着工、翌2020年2月に竣工しました。

 

■敷地

敷地は街道から既存のクリニック棟を挟んだ奥側で、手前の駐車場と奥の広い駐車場を結ぶ車路脇のスペースです。来院者は車利用が多数を占めています。奥側とはいえどちらの駐車場からもよく見える位置なので、外観のデザインはとても重要でした。

 

■要望

約10人の職員が午前と午後の診療時間の間に昼食を取り休憩する空間の他、キッチンスペースと便所、洗面等必要な付随する機能、雨天時の往来や物干し場に配慮して軒を大きく出すこと、更には内部の様子や物干し場が駐車場や車路から見え難くするということが望まれました。

また、将来育児相談室にも使えるよう母子達が落ち着いて寛げる空間とすることが求められました。

 

■イメージ

この増築棟と既存棟の関係は、中世の農村に建つ牧師館と小さな教会からイメージしました。教会と牧師館は対として一体であり、村に住まう人々にとっての心の拠りどころです。クリニックもそれと同じように地域に住まう人々、子育てをする親御さん達が心をよせるような施設になって欲しいと願い、そのイメージを計画に重ねました。

既存の外観では医師である清水先生のお人柄や医療への思いが表現されることを重要視しましたが、この増築棟は主な患者である子供達やその親御さんの心に優しく響くような、愛らしいデザインとすることが望ましいとだろうと考えました。

 

■外観

デザインは既存棟に則して19世紀末ウィーンで開花したセセッション様式を基調とし、大正から昭和初期に流行した勾配の急な切妻の棟がシンボリックに構成される洋館スタイルにしました。そして壁面には釉薬の施されたクラシックタイルによる市松装飾を、軒裏はオリーブグリーンの色で鮮やかに塗装しました。また壁の角をR状に立体的に削るなどして、子供が絵本で見るような夢のある楽しげな装いとしました。

 

■インテリアについて

インテリアは職員の方々や、育児相談に訪れた親御さんが寛げるように柔らかい空間に設えました。天井の梁は現しとし、腰板貼りの上にウイリアム・モリスデザインのクロスを用いる等、外観に合わせたクラシカルな装いとしました。また、カーテンは生成りのレース、掃き出し窓にはバーチカルブラインドを用いて、外光を取り入れながらも外部から中が見えないように工夫しました。