本歌取り(ほんかどり)とは、和歌や連歌において、先人の優れた歌を重んじ、その語句や趣向に敬意を示しながら取り入れて新しい歌を作る表現手法ですが、建築では茶室や数寄屋で用いられる手法です。ただこの手法は誰でもできるというものではありません。古への深い造詣、負ってきた歴史、背景、物語、更にその建築を生み出した人物以上のデザイン力が必要です。村野藤吾は「先人の歩いた道を辿らせて頂いている」と語り、優れた茶室や数寄屋の設えを積極的に取り入れることで“村野数寄屋”と語られるような魅力的な作品を数多く残しました。これから数回にわたり、村野が本歌とした桂離宮の設えを紹介したいと思います。