ザ・クラブの中に前回ご紹介した川喜多半泥子が命名した茶室「愚庵」があります。広間でありながら小間と同じ低い天井が特徴で、水平に広がってゆくような感覚があります。このような茶室はここだけだと思います。
床は原叟床という板敷に床柱が控える形で、これは“村野残月”と言われる先生が設計した残月床でよく使われる手法です。これは金沢の兼六園の成巽閣の茶室、清香軒の床を本歌としたものと思われますが、「見事」としか言いようのない美しさです。どのような本歌も軽々と超えてゆく村野先生の才能に驚かされるばかりです。