30年の間に変わったのが、ザ・クラブ(最も古い棟)の客室の減築、西館の解体、本館の改修でした。
本館の改修は、フロント廻り、2階のゆったりとしたロビーと花階段がなくなり、廊下と店舗などに変わり、竹を敷き詰めた天井の喫茶がなくなり、北欧風のゲストラウンジとなっておりました。
まず客室を堪能しました。素晴らしい眺め、設えはどこもとてもよくできています。細部まで丁寧に考えられており、流石という思いでした。村野・森建築事務所在籍中、長きにわたりホテル関係の仕事を多く担当させて頂いたこともあり、その弊害で事務所以外のたホテルに泊まると、至らないところや、あらが気になり落ち着かないので、今まで旅はもっぱら旅館でした。
志摩観光ホテルは、ハレとケのバランスが見事で、心躍りながら落ち着く、このようなホテルは村野作品以外には、まずありえないでしょう。照明器具、家具、細部、空間、その全てが心地よく語り掛けてくるようで、その声に耳を澄ませました。
大きな発見としては、廊下の雁行、戦前の作品「大阪パンション」がここに生きていました。「廊下は単なる通路でない!大切なもてなしの空間である」という言葉を聞いた様な思いでした。